EUとイギリスでイギリスのEU離脱案(ブリグジット案)が最終的に合意。途中もつれにもつれましたが、最後の段階ではスピード合意となりました。
しかしこの合意案、各国の国会が承認しないと意味を持ちません。そして最大の問題は、最大の当事者であるイギリス議会(下院)が承認するかどうか。
目下のところ、与党内がまとまっておらず直球勝負ではブリグジット案は否決される可能性が高い状況です。
12月10日頃が予定されているイギリス下院での採決、ブリグジット法案の行方に注目せざるを得ません。
ダメですよ、なーんにも考えずにGBPやEURのポジション持ってイギリス下院の採決結果を迎えてしまうのは。イギリスの国民投票の時と同様、とんでもない値動きが生じる可能性がありますので。
概要
ブリグジット案についてイギリスとEU間で合意が成立
11月26日にEUとイギリスは、イギリスのEU離脱案(ブリグジット案)の内容を合意。スッタモンダありましたが、最終的にはスピード決着。
ただし問題はこのイギリスのEU離脱案は、EU加盟各国の国会が承認しないと効力を発揮しません。特に問題は一番の当事者であるイギリス。
イギリスはメイ首相率いる保守党は。身内にEU離脱案の反対派を多数抱え、政府とEU間でEU離脱案(ブリグジット案)をまとめても、国会が承認するのか非常に怪しい状況です。
国会がブリグジット案を承認しないと、自動的にイギリスは来年3月にEUから放り出される、ハードブリグジットとも無秩序離脱とも言われる状態となります。
EU側はスペインの国会承認が手間取るかもですが、そんなにハードルが高い仕事ではないため、イギリスはブリグジット案を国会で承認できるのか、が今後の最大の注目点となります。
本当の勝負はこれから、GBP(ポンド)とEUR取引に気は抜けない
今回はあくまでもEUとイギリス政府がブリグジット案で合意した段階で、最終的には各国の国会でブリグジット案の承認を得る必要があります。
出て行かれるほうのEUは問題ないとして、問題は出て行く側のイギリス。実はとてもではありませんが、イギリスの国会(下院)ですんなりとブリグジット案が成立する状況下にはありません。
下手すればイギリス政府とEUで合意したブリグジット案、国会がひっくり返してしまう可能性が大いにあります。
ノンビリとGBP(ポンド)とEURのポジション持っていると、即死のリスクがあります。
下院で可決するには320票が必要、しかし正攻法では集まらない
イギリス下院の定数は650です。議長他の採決に加わらない議員を除くと、ブリグジット案の成立には320の票が必要です
現在メイ首相が率いる、与党の議席巣は下記。
・保守党 314
・DUP(※) 10
※北アイルランドの地域政党、民主統一党
保守党とDUPが右から左にブリグジット案に賛成すれば、何の問題もなく下院でブリグジット案は認められ、無事にソフトブリグジットで着地します。
ところがメイ首相率いる保守党は、今回のブリグジット案に反対の議員も多く一定数の造反は避けられない状況。EUとの合意案も、反対派の閣僚の辞任はあってもギリギリの所で政権内部をまとめた形です。
さらに問題なのは、連立相手のDUPも今回のブリグジット案に反対している点。このままだと、読めない保守党の造反に加え、DUPの10票が反対にまわって、何をどうしても320票集められる状況にありません。
冷静に考えてDUPの10票が無い時点で、ストレートの直球勝負だと子供が考えても320票は集まりません・・・。
メイ首相はDUPの支持母体の北アイルランド経済界にDUPの説得を依頼しています。しかし北アイルランドの歴史的経緯を知っていると、ゴリゴリの親イギリスのDUPが今回のブリグジット案を飲むとは個人的には思えないんですよ。
EUも北アイルランドの血を血で洗う悲惨な歴史を知っているだけに、国境問題で相当イギリスに譲歩しているのですが、その譲歩が対DUPにはアダとなっています。前回の選挙、なんでメイさんもやったんかね、それがなければDUPと連立する必要なかったのに。
北アイルランド問題、管理人は若き浦沢直樹氏が手掛けた漫画「パイナップルアーミー」で最初に知りましたが、イギリスの触られたくない歴史の裏側です。
正直、DUPが賛成にまわったとしても保守党内で造反が出るのが確実な状況下、余程の変化球が決まらないと、320票は集まりません。
労働党の賛成は無い
日本の国会を考えると、それじゃ野党の一部が造反すれば・・・、と思うのですが、イギリスの場合、さすがにそうは問屋が卸しません。
ゴリゴリの労働運動の闘士・コービン党首の下、絶賛労働党は迷走中・・・。コービン党首は今回のブリグジット案に反対。EU残留派のブレア元首相も現在のブリグジット案に反対しており、労働党は右から左まで今回のブリグジット案に賛成する要素なしです。
労働党は総選挙の実施を求めていますが、さりとてコービン氏の下で労働党が政権を奪取する可能性も低くて、どうやら今回のブリグジット騒動、労働党がキャスティングボードを握る機会はなさそうです。
イギリス下院での採決は12月10日頃
いずれにしてもイギリス政府は下院で今回のブリグジット案の採決の必要があります。日程は確定していませんが、12月10日頃の予定とされています。
12月半ばの下院での採決に向け、メイ首相は最後の説得作業を行うことになります。
再交渉や再度の国民投票の可能性も
基本的には12月10日頃にブリグジット案が下院で採決される方向で進んでいます。下院で320票以上の賛成が得られてブリグジット案が無事承認となれば一安心。しかしそうでない場合は、再度EUと交渉・再度国民投票など、様々なシナリオが考えられます。
いずれにしても否決となると、GBPやEURの関連通貨ペアは荒れる可能性大です。イギリスが再交渉!、と言ってもEU側はもう交渉は既に終わった、というスタンスであり、知らんがな、と言われてしまう可能性だってあります。
FXトレーダーとしては、2016年のEU離脱を巡る国民投票の際と同様、12月10日頃に向けて各通貨ペアがとんでもないプライスアクションを起こしても困らないような手を打つべき。
管理人は既に年内のトレードを終了しているので、お気楽ノーポジです。年末でただでさえ、ヘンテコな値動きが起こりやすい中、イギリス下院のブリグジット案の採決に飛び込むので、相当荒れる値動きが発生してもおかしくありません。ご注意ください。
まとめ
当サイトはニュース系の記事はこれまで殆ど書いてこなかったのですが、今回のブリグジット案を巡るイギリス下院の攻防は、トレードも休みで時間あったので記事書いてみました。
メイ首相が辞任と引き換えにブリグジット案を可決してもらう、というのが日本的な解決方法で、保守党からはそんな話も出ているようですが(何せ反対派も否決した後の展望がありません・・・)、それでもイデオロギー色の強いDUPを説得できるのか、微妙なところです。
12月の為替市場は、イギリスのブリグジット法案を巡る攻防に一喜一憂する日々が続くことになりそうです。
12月にFXトレードするならお気をつけください。もし恐いなら、12月トレードやめることを本気でオススメします。11月の感謝祭以降の金融市場は値動きがなくなる傾向にあって、ヘンテコな値動きがタダでさえ発生しやすくなるので。そんな時期にブリグジット案の採決問題、余程うまく立ち回らないと飛んで火にいる夏の虫で簡単に狩られてしまいますよ。
イギリスでのブリグジット法案の行方、FXトレードするなら要注目です。
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